no.6




6日目(12/4)

今日もアスワンはぴーかんだ。なんて良い町だ。素晴らしい。そして出発もゆっくりなんだ。素晴らしい! 切りかけのオベリスクを見て、アスワンハイダムを通り、アブシンベルへ向かうだけの超のんびりな1日だ。


ホテルで朝食を取り、のろのろ準備をし、ナイルを眺め、出発する。


切りかけのオベリスクとは石切場で切り出す途中に、あまりの大きさでひびが入り、そのまま放置されたオベリスクのことだ。これはオベリスク好きのハト女王のものと考えられているらしい。古代エジでは「大きい」は素晴らしいことだったんだろう。今やナノテクノロジーとか小さいことに研究が向けられているが、古代エジでも小さいことやってた人いるんだろうなぁ。たとえば米粒にヒエログリフを書くとかさぁ。いなかったのかなぁ。


駆け足のヤバーニツアーでは出土した小さなアクセサリーなどじっくり眺める暇もなく、石の固まりに目を奪われるばかりだ。小さなお宝もきっと凄いんだろうけどなぁ。と言うわけで、ここで古代エジ人が石を切り出していたのはよくわかった。ただそれだけなのだ。


これからアスワンハイダムを通り、空港からアブシンベルに向かう。あぁオールドカタラクトに行けなかった。残念だなぁ。と考えつつ車に乗り込む。アメリカ合衆国のフーバーダムは空から眺めた。イモヘテプが好きなお笑い映画「ナショナルランプーンズ クリスマスバケーション」にもフーバーダムは出てくるので、あそこの巨大さは凄くわかる。人間は相当ちっぽけな生き物だと思うが、端から端が見えないと、全貌が見えないと大きいとは感じにくい。アスワンハイダムは、そこにかかる橋の上から眺めたが、この場合はもう全く訳がわからない。大きいのはわかるが、感動もない。通りすがりの観光イモヘテは、このダムには沢山の遺跡とヌビア人村が沈んでいることを想像するだけだ。ダム効果は勿論沢山あるが、ナイルが自然に運んでくれた栄養のある土は農地に運ばれなくなったそうだ。


さて飛行機に乗り、ラム2に会いに行きやしょう。アスワンからエアーで30分。無機質なかなり綺麗に整った道路をヤバーニ4人組は超大型観光バスに乗り込む。人は歩いていない。時折見かけるのはポリスのみ。なんだこれは!? ここは古代エジプトで最も偉大なファラオ:ラムセス2世が建立したアブシンベル神殿見学のためだけに用意された、空港、バス、ホテル、人々、その他色々の土地なんだ。


おぉ初めっから凄い攻撃じゃないの〜ラム2さん! でも、死んで相当経つのに随分と権力野郎じゃないね〜?などと思っているとすぐに無機質な土産物屋と無機質なゲートへ到着。アブ神殿の後ろ側から回り込むかたちで神殿へ向かう。目の前は静かなナセル湖。太陽は整備された神殿への道に照りつける。自然と目線は下を向くのだが・・・おぉ〜っとなんだこれは! すっご〜い! あらまぁ大きい! こりゃ、驚いた! ラム2の岩山だ〜! 写真では見ていたけれど目前にすると驚きまくりだ! それに比べてさすがにネフェルタリの神殿は小さい。でも奥さんの神殿だけしかなければこちらも相当大きいのだけどね。






立ち上がって歩き出しそうなラムセス









ラム2神殿とネフェ神殿の間はトラックがいて、なにやら忙しそうだ。こんな所にラッキーは落ちていた。映画を撮影していたのだ。奥には綺麗な金髪のすらっとしたお兄さんもいるぞ。モハは映画監督となにやら話したが、作品名を聞いてもわからなかったらしい。ラム2神殿バックに待ち伏せていたカメラマンに写真を撮って貰うことにする。写真には神殿内の写真のおまけが付くと言うからだ。


ポーズを決めていると、この映画監督と何故かポリスが近寄ってきたので、「一緒に写ってよ」と頼む。非常につたない英語で監督さんの名前を聞くが、聞き覚えが無く、今では忘れてしまった。かなりつたない英語で「私映画好きなんだ」と言ったのに、このお方の名前を知らない・・言わなきゃ良かったか?「ジョルジョ・アルマーニ」に似た名前の様な気がする・・・すでにラッキーは落とした。






この人が監督様、ご存じの方がいらしたら、お名前を教えて下さい。(チタン撮影)












映画撮影のトラック 沢山のスタッフがいて、片づけながらご本尊をぱちりと撮影していた。顔がにこにこしてて、撮影しながらも遺跡の凄さにやられていたんだろうなぁ




ヤバーニ4人組と共に沢山の日本人がここに到着した。わぁ〜っとそこら中で撮影会が行われていた。30分前のことだ。もうほとんど人がいない。もう、帰ったの? 恐るべしラム2! ラム2山を見るために飛行機に乗り、30分で帰る旅行者達! これを日本で例えると、東京から,たこ焼き食べに大阪へ行ってとんぼ返りするようなものか?


幸か不幸か、この2つの人体岩山と静かなナセル湖と警備のポリスはほぼ、ヤバーニ4人組専用となっている。


まずはラム2神殿へお邪魔しよう。岩山をくり抜いた神殿なので、当然ながら内部は暗く、正面の3人の神様(プタハ、アメン、ラー)と目立ちたがり屋のラム2がほのかにライトアップされている。神秘的な感じがする。壁面のレリーフはどこでもみかけたおきまりのレリーフだが、暗い分だけファラオの脅威を感じる。オシリス型柱もなんだかイモヘテプの人となりを見透かしているように、見下ろしている。







オシリス神にコスプレしたラム2

















 
 列柱室の神々















ご本尊4体 
左の1体はプタハ神でこの神様は地下世界に関わる神様なので光が当たらないようになっている。芸が細かい

左よりプタハ、アメン、ラム2、ラーの順に鎮座しておられる。(チタン撮影)



イモヘテプ:「いやいや、ラム2さん。ここは凄いよ。ここはラム2オリジナル
        でしょ? あなた本当に凄いファラオだったんだねぇ」

ラム2   :「気づくのが遅すぎる。お前は大馬鹿者だ。入り口のレリーフ
        にはお前と同じアジア人捕虜も彫ってあるんだぞ。

イモヘテプ:「確かに凄いよねぇ。92歳まで生きて、100人以上の子持ち
        でさぁ、でもさヒッタイトの姫を嫁に貰うときに『僕、ビンボーだ
        から持参品をもっと増やしてちょ』って言ったんでしょ? せこ
        いよね。

ラム2   :「・・・・だけど私は凄い。知らないのか?『全能なるものよ、わ
        が行いしものを見よ。そして絶望せよ!』(←英国詩人シェリ
        ーの名文句)私のミイラがパリへ渡った時は賓客として正式
        な歓迎を受けたんだぞ!」

イモヘテプ:「ふぅん・・・私がパリへ生身の体で渡ったときは、スーツケー
        ス引きずって大変だったよ。凄いことはわかったよ。やっと。
        ここに来てわかったよ。でも絶望しないもんねっ。わたしゃ全
        能じゃないし・・・。」






神殿内の倉庫何の倉庫だったのだろうか?倉庫にもレリーフが・・













ご馳走のレリーフ(チタン撮影)









一人二役でしゃべりながら、神殿を満喫する。気がつくとイモヘテ一人しかいない。凄いなぁラム2は・・・何てったって他のファラオの遺跡の流用。他国と戦って戦況が怪しくなると平和協定を結ぶ。ミイラのかぎ鼻の部分には沢山の胡椒が詰め込まれたし、なんだか格好つけずに、がむしゃらにファラオってるのに、建築物はおもいっきり格好つけてる。凄いなぁラム2は・・・いつの世もこういう人が歴史に名を残すのかねぇ。「お前はまだ私の凄さがわかっていないぞ!」と怒られそうだ。


ファラオの迫力に圧倒されたくて、思いっきり息を吸ってみる。イモヘテに超能力があれば、3260年前の完成の式典にタイムスリップできたかも・・まさに無能のイモヘテプだ。絶望・・・やはりシェリーの詩は思い切り言い当ててる。さすが!






ガデシュの戦い(チタン撮影) 
ガデシュの戦い:ヒッタイトとの戦いの地。ここで若きラム2は運良く勝利し、この題材のレリーフを至る所に残すのだった。




そんなこんなで長時間ラム2神殿に居座ってしまった。


奥様神殿(ハトホル神殿)へ走る。最愛の妻のために作った神殿。ネフェルタリはこれら2つの神殿完成の翌年に亡くなったそうだ。ラム2が29歳くらいの時に着工、建設期間26年。ネフェルタリの寿命はこの神殿と重なるようだ。ネフェルにとっては縁起の悪い神殿だと思うのはイモヘテプだけだろうか・・








ハトホルさん(身長10m)とイモヘテさん(身長20m?)(チタン撮影)

















ナイスバディで美形のハトホル女神(チタン撮影)













1859年の人の落彫り









夜になったらまたくるよ! 凄い物見せてね。明日も来るよ! しつこいよ〜と凄いファラオに挨拶してホテルへ向かう。


アブ神のための大型バスに乗り、アブ神のためのホテルに向かう。アブ神のためのホテルはアブ神のすぐ近くだ。ナセル湖に面した、静かなコテージタイプのホテル。ここで明日の日の出まで過ごす。ランチはホテルのブッフェだ。なんとも久しぶりにブッフェで料理はイタリアン! 沢山の種類の山盛りの料理とデザートとご対面すると見るだけでおなかが一杯になる。こんなに他種類のおかずを見たのは何年ぶりだろう(ってかなりオーバーな言い方!)。毎日のごはんが寂しく、飽き飽きしていたので、何を戴くか凄く迷う。もう、嬉しくてなんでも美味しい!


だけどイモヘテさん。ここでアブ神の音と光のショーを待ち、晩ご飯を食べ、日の出を待つんだ。そしてここで朝ご飯を食べて・・考えてみればかなり退屈なんじゃない? そうなのです。喜んでいる場合ではないっ。ここで3食食べるんだ。アブ神のためのレストランは無いのか? アブ神のためのスークは? せめてアブ神のためのゲーセンとかカラオケとかないの? と言うわけで、昼ご飯が終わると日没まで無意味なフリータイムが始まる。


静かな静かな波の音をたてるナセル湖と鳥の鳴き声。最初は気持ちよかったけれど飽きてしまう。洗濯をし、風呂に入り、昼寝をし、散歩をし、風呂に入り、昼寝をし・・・。






部屋の様子(チタン撮影)










実は日本出発2日前に旅の日程変更の電話があった。アブシン見学後アブシン〜アスワン〜カイロの移動はスムーズに行くはずだった。午後にはカイロに到着し、カイ博見学のはずだった。しかしアスワン〜カイロのチケットが取れず、カイロの予定は最終日にずれ込んだ。自由を愛するチタンとイモヘテは唯一の自由時間である、最終日カイロの午前中をカイ博自由見学と予定していた。この唯一の自由時間が「今」の風呂、昼寝、散歩の繰り返しに充当されている。なんじゃこりゃ?







ホテル
もともと静かなホテルだが、人がいないのでますます静か。












この何日か常に監視されている。ガイドとずっと一緒に寝泊まりするからだ。今日はこれでおしまい! また明日ね〜状態ではないのがいけない。エレベーターも一緒。部屋にはいるまで見張られている。イモヘテはおとなしくてきちんと言うことを聞く内向的なタイプなので、きっとチタンが危険人物と思われているのだろう。ふむふむ納得。すべての点に於いて、チタン、イモヘテとは全く違う素晴らしい志を持った方に、こんな表現の仕方では大変失礼であるが「私たちってスーチーさんみたい」と嘆いていた。自由は大切だ。


さぁ。今日のメインイベントアブ神の音と光のショーへ、超大型バス5人乗りで向かおう。(寒いという噂なので超厚着。)モハが「今出かけるの凄く残念。今日エジVS日本のサッカーの試合やってるですぅよ。」なんて危険な発言! 忘れていたがワールドユース大会がUAEで行われているんだ。イモヘテはサッカー大好き。W杯を見に韓国へも行った。以前ボルネオに行ったとき、ユースのブラジル代表と同宿で鼻血が出そうだったこともある。このときはホテルのスタッフにたちの悪い追っかけと間違えられ、追い返されそうになった。


「な、なんだ! 部屋のテレビではやってなかったよ」部屋のテレビには無いチャンネルで放送しているらしい。「おい。おい。それは大変! しかもエジ対日本なんて、見たいなぁ。いい思い出になるんじゃないのぉ」興味有りはイモヘテのみで、巨大バスは神殿へ向かう。白い建物が並ぶ道路を走ると街頭テレビに凄い人だかり!!!!「うわぁ。モハここで降ろしてくれぃ。敵に混ざって試合がみたいよ〜」とただ一人大騒ぎをするのはチタン・・・ではなくイモヘテプさん。皆さん想像してみてください。敵地の街頭テレビで見る試合なんて超面白そう。わぁボコボコにされたりして面白そう!と騒ぎつつも無視され神殿へ・・・。


バスを降りて「では、私はあちらでサッカー見てきます。」と走り出そうとしたら、超怒られた。鬼モハだ。なんてこったい! バスなんかじゃなくて、歩いてここまで来てたら、絶対に街頭テレビに紛れ込めたのに・・・。


サッカーより私の方が凄いぞ!! 見なきゃ絶対に損するぞ! というラム2の怒りの声がしそうな暗い道を進む。こんなに沢山の人どこにいたの?と思うほど沢山の人々がいる。


音と光のショーは4カ所(ギザのピラミッド、カルナック、イシス、アブシンベル)で見られるがアブシンベルのショーは一番新しい。大神殿と小神殿の間、ナセル湖沿いにコンクリートのベンチが並ぶ。ベンチにイヤホンジャックがあるので、言語別に座りイヤホンから語りを聴く。コンクリのベンチに直座りは寒いなぁと思っていると、ちゃんとラグを敷いてくれる。気が利いている。


風の音と共に、まるでFMの長寿番組「ジェットストリーム」のような低い声の語りが始まる。物語はラム2とネフェルの終始ラブラブモードの語り合いで進む。確かに素晴らしい構成でなんとも感動する。ラム2はなんでも最高が好きなんだ。「あったりまえ! 私はファラオの中のファラオなんだ!」暗がりから効果音や壮大な音楽付きで突然ライトアップされるラム2は脅威だ。神格化されても不思議に感じないくらいの貫禄。唖然としてしまう。演出が上手いんだな。と言うわけで30分のショーは驚くほどに豪華で見応えがあった。寒かったけどね。ぶるぶる・・・。






夜のアブシンベル。道に迷ってる時にこんなのが出てきたらびっくりするなぁ。








「ほら、サッカーじゃなくて、こっちの方が良かったでしょ?」と自慢げなモハ。・・・ちっ・・・悔しいが、確かにその通りかも・・・またもや歩ける距離を巨大バスに乗る。街頭テレビを探すと、皆帰るところだ。「なんだ終わっちゃったよ。」窓からすぐ下を見ると小さな可愛い女の子が2人。「この子達とサッカー見たかったなぁ」手を振ってみると笑顔で振り返してくれた。


軟禁生活であり、質素な毎日が続いている。酒はあまり飲めないが、6日も酒を飲んでいないのは珍しい。好き勝手にできないのが悲しくなってきて夕食にはビールを頼み、しかも一人で飲む。他の人々は明日の日の出を考えて飲まないのだ。大人数のツアーならわ〜っと騒ぐ人がいて毎日酒盛りかもしれないが4人ではちと寂しい。それでも一人ビールで陽気になり、後は寝るだけだ。


とうとうエジで朝を迎えるのはあと2日となった。明日から最後の追い込みでスーパー忙しいスケジュールになる。頑張ろう! 最後までエジを見てやろう! と心に誓うのであった。







 部屋のハトホル女神(チタン撮影)