ヒル・トップへ
真っ直ぐ進んで行くと、すぐに自動車道路に突き当たる。さて、この道の左右どちらに進めばいいのだろう? 案内表示も何もなく、皆目ヒル・トップへの方向が分からない。通行人の姿も見えず、ただ走り去る車だけでお手上げである。地図を見ればフェリーの波止場から真っ直ぐ進む道路があるようになっているのだが、そんな道はどこにもなく、T字型に道路にぶっつかってしまう。
山道に入る
そこでやむなく、当てずっぽうに左へ曲がって少し様子を見ることにする。左に湖を眺めながら少し進むと、右手の山中に下のような木製の小さな表示板が目に留まる。だが、その書かれた文字が風化して消えかかり、よく判読できない。“Path(小道、散歩道)”の文字は大きくて分かるのだが、他の文字は薄れて読み取れない。辛うじて「Hill Top」の小さな文字が読み取れるぐらいである。ひょっとしたら、この山中の小道がヒル・トップへの近道なのかもしれない。そう判断してこの道に分け入る。後で思えば、無謀なことをしたものだ。

風化して文字が消えかかった表示板。ここから山道を入って上る。
細い藪の小道を自転車を押しながら坂を上って行く。森の中の薄暗い中を懸命に自転車を押して行く。果たしてこのまま進んで大丈夫なのだろうか? 薄暗く、人気のない山中だけに不気味で不安になってくる。引き返すわけにはいかないので、とにかく上り道を前進する。息をはずませ、汗だくになりながら必死になって押し進む。かなり進んだところで、やっと舗装道路に抜け出る。やれやれである。

入り込んだ山道はこんな感じ。自転車はレンタルしたマンテンバイク。

やっと道路に出た
道路に出たもののここも上り道で、ギアチェンジしながらえっちらおっちら漕ぎ上がる。吹き出る汗をぬぐいぬぐい進んで行く。かなり進んだところで、再び“Path”の表示が目に留まる。ままよとばかりに、その山道に入り込み、今度は自転車から下りて押し進む。後で思えば、これも大変なコースを選んだものである。とても他の人にはヒル・トップへのサイクリングは勧められたものではないなあ・・・と独り言をいいながら上って行く。
しばらく進むと別荘みたいな建物が見えてくる。庭園付きのちゃんとした建物だが、2軒とも人の気配はない。ドアが開くので“ハロー”と大声で叫んでも何の応答もない。古びた車もあるのだが、どうしたのだろう? これでは道を尋ねようがない。あきらめて、再び山中に入り、坂道を歩いて挑戦する。これでは何のためのサイクリングか分かりはしないなあ〜とぼやきながら進んで行く。こんな坂道や野道ばかりでは、かえって自転車が邪魔である。
苦難の野道
やがて再び作業小屋らしい建物が見えてくる。誰か人が居ますようにとの願いもむなしく、そこにも人の気配がない。ここで野道が分岐しているので、果たしてどちらに進めばいいのか分からず、途方に暮れてしまう。滝のように流れる汗をハンカチで拭きながら、深呼吸する。ハンカチも汗でびしょびしょで、絞りながら使わないといけないほどである。まさに立ち往生とはこのことだと思いながら、地面にへたり込んでしまう。もう、ずいぶんと疲れきっていて、くたくたである。
と、その時、若いカップルが向こうの斜面の野道を下りて来る姿が目に留まる。そこで急いで駆け寄り、道を尋ねる。彼らはヒル・トップの方向から来たといい、少々ハードだけど、この道をたどれば着けるという。自転車も押してなら行けるという。少し安心して、彼らが押し開けて来た柵の扉を見ると、その横に10cm平方ぐらいの板に「Hill Top」と小さく書いてあるのが目に留まる。なんと案内の悪いことか! これでは目に留まるはずもなく、みんな迷ってしまうに違いない。
とにかく、彼らの言葉を信じて行くしかないと覚悟し、自転車を押しながら坂を進んで行く。しばらく上って行くと、今度は胸の高さまである鉄柵の通路が現れる。よく見ると、その柵はジグザグに造られていて、車馬が通れないようになっている。これでは自転車も通れない。一難去ってまた一難。疲労困憊の状態なのに、これにはほとほと参ってしまう。どうしたものかと考えてみるが、ここまで来たからにはただ前に進むしかないと決断する。そこで、残りの力をふりしぼり、自転車をタテに起こして持ち上げながら、やっとのことで通過する。
再び転倒
これでどうにか最大の難所を越えると、再び山道を進んで行く。間もなくすると道もやや広くなり、下り坂になる。ここでやっと自転車にまたがり、ゆっくりと走行する。しばらく下って行くと、その向こうに駐車場が現れ、周りに人影が見える。「これで助かった!」と胸を撫で下ろし、山道から駐車場に出ようとストップする。と同時に降りようとすると、その途端にバランスを崩して足をとられ、自転車もろとも転倒して前にばったりとつんのめる。

やや広くなった山道
その際に、左手で強く支えたため少々の手首の捻挫をしたらしい。さらにまた膝小僧の打撲と擦過傷、そしてまた腕に軽いかすり傷を負ってしまう。大事に至らず、チェーンも外れていないので走行するのに支障はなく、最小限の範囲で事は収まる。(その時の事故から2ヶ月以上経った現在でも、まだ手首の異常感が少し残っており、また膝小僧の傷跡も消えずにくっきりと残っている。) |
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