N0.8




限られた展望範囲
丘の頂上からゆるやかに下りて行くと、断崖見物の随一の展望所に出る。これが待ち望んだモハーの断崖なのだ!! 2日がかりのチャレンジだけに、感動もひとしおである。昨日も風雨の中、同じ場所に立ったのだが、見えたのは霧の世界だけである。切り立つ断崖とは、まさにこのことで、大地が突然失われて海中へ200メートル以上も直下しながら垂直の大絶壁を形成している。その大自然の見事な造形にただただ心打たれ、見とれてしまう。絶壁直下の海面から見上げたら、さぞかし大迫力の断崖が迫るように見えるに違いない。


この階段が断崖の展望ポイント。石のプレートの塀が並ぶ。

古代によほど大きな地殻変動があったのだろうか? このリスキャノア湾に面したハグ岬一帯は「モハーの断崖」と呼ばれ、このあたりは高さ200メートル以上の断崖絶壁が8キロメートルにわたって続いており、その迫力ある壮大な大景観はアイルランドでも有数の観光地になっている。


下りの階段になっている展望ポイントは、大きな自然石のプレートを並べた塀が設けられ、それより先へ出られないようになっている。これを乗り越えて断崖に近づこうとすると、監視員がいて制止する。断崖見物は、この限られた範囲の塀越しに観賞することになる。角度的に、ここからの眺めがいちばん素敵な断崖の景観が見られるわけで、それを外すと最良の景色は見れなくなってしまうのである。


これがモハーの断崖全景。この景観を見るために2日もかけた。


上の撮影ポイントよりも少し下にくだった所からの眺望。崖の高さがよく分かる。

だから、地上から撮った断崖の写真は、撮影者が異なっても、どれも申し合わせたように一様になってしまう。それは人によって異なることはない。というわけで、航空写真か海上からの撮影以外に、変わった角度からの写真は見られないのである。この撮影ポイントがもう少し沖合いへ突き出していたら、より効果的な断崖の景観が眺められるのかもしれない。入場料を取って断崖壁から100mほど先へ展望ブリッジを設けたら、結構商売になるのかもしれない。だがしかし、景観を害するということで許可されないのはいうまでもなかろう。


昨日撮りそこなった分まで、この際とばかりに断崖の写真を撮りに撮りまくる。見事な青空を背景に切り立つ断崖の黒い陰影が、えもいわれぬコントラストの美しさを見せている。アラン諸島観光を犠牲にして再挑戦したのだが、その甲斐があったというもの。図に当たるとはこのことをいうのだろうか?



 この景観を眺めながら先の岬の方へ進んで行く。手前の断崖の突端には人の集まりが見えるのだが・・・。




断崖付近の様子
存分に写真を撮りまくった後、断崖に沿いながら岬の方へ歩いて行く。絶壁の険しさとは対照的に、反対側の左手一帯にはなだらかな緑の草原が広がり、牧牛が草を食むのどかな風景が見られる。進むにつれ、「崖っぷちに寄らないで」のユニークな道路標識?があったり、「この地点から先に行かないで」の立て看板があったりなど、盛んに注意を喚起している。


断崖沿いのこの道を歩いて行く。右側が断崖。


断崖縁に置かれたユニークな標識


ここから先へ行くなと言ったって・・・。それでも私は行きます。

スリル満点の崖っぷち
ところが、それを知ってか知らずか、すべての観光客はこれを無視して通り過ぎ、ずんずん先へ進んで行く。みんなで通れば怖くない?の類なのだろう。もちろん私もこれを無視して断崖縁の小道を先へ進んで行く。この辺りは柵も何もなく、ちょっとでもけつまずけば200mの断崖下へまっさかさまに落下する。なかには、崖っぷちぎりぎりに迫って記念写真を撮ったりなど、それぞれにスリルを楽しんでいる。たまには落下の事故などがあるのだろうか?


そこのお二人さん、大丈夫? ここの崖っぷちから手を伸ばして断崖下を撮影した
のが一つとんだ次の写真である。。



上の写真より若干手前に戻った角度からの写真

命がけの写真?
私もその類にもれず、怖いもの見たさで断崖壁ぎりぎりに近づき、撮影を試みる。崖っぷちぎりぎりに静かに寝そべり、右手にカメラを持って断崖の先に差し伸ばし、撮影してみる。こうして命がけ?で撮ったのが次の写真である。断崖面を撮りたかったのだが、惜しいかな海面だけしか写っていない。デジカメは日光の下では画面が明るく映えて撮れた写真の確認ができない。とにかく、二度と試みるのは無理なので、良くも悪くもこの1枚にだけにする。


これが命がけの写真? 断崖壁が写っていれば、その高さの感じが分かるのだが・・・。

対岸の景観
この地点まで来ると、先に通った展望ポイントの真下の断崖壁が真向かいに見渡せる。その突端に小さなオブライエン塔が見える。これはアイルランド最初の王ブライアン・ボル直属の子孫であったコーネリアス・オブライエンが、女性客を喜ばすために1835年に建てたといわれる塔である。そこからの断崖の眺めは、また違った景観が見られるのだろうが、今は生憎と付近一帯が工事中のため、塔のある地域へは通行止めになって入れない。



           断崖付近一帯の様子。白の矢印の地点が断崖の展望ポイント。右側には広大な草原が広がり、放牧された牛がのどかに草を食んでいる。







 この草原一帯が私有地であることを表示している



突端にオブライエン塔が、断崖突端下には屹立する離れ岩のブレナン・モアが見える。




その断崖に打ち寄せて砕け散る白波がなんとも美しい。この塔の断崖直下の海中には、ブレナン・モアと呼ばれる高さ70メートルの離れ岩が屹立しており、それが白い水しぶきに囲まれているのが印象的で、断崖の景観に素敵なアクセントを添えている。沖合いには、こちらにいらっしゃいといわんばかりに、アラン諸島のなだらかな島影が浮かんでいる。そのうちきっと行くからね〜!



 前方遠くにはかすかにアラン諸島が見える。右手のお嬢さん、ちょっと待って! そこからダイビングするのはヤメテ!




今日は好天で風もない穏やかな日和だからいいものの、これが強風が吹いていたら、この崖っぷちの小道はかなり危険な通路となるだろう。そんなことを思いながら、ぼつぼつ引き返すことにする。今日という日は、実に恵まれた断崖観光日和である。昨日の悪天候が悔やまれるが、これで勘弁してやろう。文句なしの快晴をプレゼントしてくれたのだから!


フレッシュジュース
ビジター・センターに戻ると、喉が渇いたので何か飲み物をと物色する。お腹の方は朝食のベーコン、ソーセージなどの肉類で腹持ちがよく、あまり空腹を感じない。物色していると、しぼり立てのフレッシュ・オレンジジュースを発見。これこれと、コップを取って並々と注ぎ込む。セルフサービスなので、こぼさないようにレジまで運び代金2ユーロ(300円)を支払う。生き返った思いで深呼吸をする。持参のミネラル水では、こうはいかない。


このスロープを下りてビジター・センターへ戻る

帰途へ
一息つくと、出発の時間だ。バスはゴルウェーの街に向けてパーキングを後にする。昨日と同じ海岸線の道路を走り抜けて行く。だが、昨日と違うところはドゥーリンの村には立ち寄らず、ゴルウェーへ直行する。私にとってはうれしいことだ。途中、やはり昨日立ち寄った岩場でフォトストップし、そこで小休止となる。だが、昨日すでに見終えた私は下車せず、車内に居残ってみんなの帰りを待つ。


再び出発したバスは立ち寄るところもなく、ゴルウェーの街に向けてひた走るのみ。それでもモハーの断崖から2時間はかかるので、遠いことこの上ない。今になって振り返ると、この11時半発のツアーはドルメン遺跡とモハーの断崖が目玉で、あとはバレン高原を走行して車窓からその風景を観賞するだけである。2回目の私にとっては、時間も走行距離も短いこのツアーが最適である。


夕食はスーパーで調達
ようやくゴルウェーの街の中に入り、いよいよ終着点である。バスは5時過ぎ、インフォメーション前でストップし、ここで終了となる。長距離ドライブを終えて降り立つと、今夕の食事のことを考える。今日はどうもお腹の空き具合がいま一つで、すぐ目の前に見える昨夜のパブでアイリッシュ・シチューをまた食するのは、ちと重過ぎる感じである。さて、どうしたものか?


その時、ふと道路向かいにスーパーマーケットがあるのを思い出す。そうだ、ここで食料を調達し、それを持ち帰って宿で食べることにしよう。そう決めると、スーパーに入ってあれこれ物色する。その結果、大きなハム2切れ、マフィン1個、オレンジ1個を計2.5ユーロ(375円)で買い込み、持ち帰る。これだけあれば、宿にコーヒーセットが揃っているので十分だ。


5時半とはいえ、まだ陽が高く、斜めの陽光を浴びるカレッジ通りを宿へ向かう。スーパーから5分で到着すると、マダムに明朝の7時朝食を頼んでみる。明日はまた、1番列車でダブリンへ移動し、その後イギリス・エジンバラへ飛ぶ予定である。そのため8時の朝食では遅すぎて間に合わないのだ。マダムは快く引き受けて、7時の朝食を約束してくれる。


これで一安心。二階の部屋に入ると早速シャワー浴び。その後、ベッドに横になると、疲れが出たのかいつの間にかそのまま寝入ってしまう。ふと目が覚めたのは9時前のこと。すっかり疲れが取れたところで、遅い夕食とする。コーヒと紅茶を入れながら持ち帰りの食品でお腹を満たす。これでお腹満腹である。


ここゴルウェーまではるばるやって来た目的・・・それはモハーの断崖見物だったが、その思いをようやく果たし、いま満ち足りた気分にひたっている。今日で旅の前半のアイルランド旅行は終わり、明日から後半のイギリスの旅に入る。


早くも今度の旅程の半分が過ぎたわけだ。旅の時が経つのは、いつも飛ぶように早い。時の流れを止められるものなら止めたいが、こればかりはどうしようもない。観念して、アイルランド最後の夜を思い出深く過ごそう。それにしては、お粗末の夕食なのだが、これもまた大事な思い出の一つとなることだろう。



(次ページは「イギリス・エジンバラ観光」編です。)