雲仙の霧氷
(05年2月25日午前10時・雲仙妙見岳にて)
冬の雲仙は、木々に美しい霧氷がつくことでよく知られ、真冬でも遠来の観光客を集める人気の自然現象が見られます。ところが、この霧氷は霧が枝に凍りついてできるものだけに、その気象条件がなかなか難しいのです。その条件とは *気温が0度以下のマイナスになっていること。 *霧が発生していること。 この2つが必須条件で、これらがうまく満たされた時、はじめて霧氷が生まれるのです。では、この気象条件になるのは、どんな場合なのでしょうか? これは次のような気象状況が必要とされています。 *低気圧や寒冷前線が通過すること。 *それが通過後に、西高東低の冬型気圧配置になること。 この状況下で、はじめて前記の条件が成立し得ることになるわけです。だから、毎日霧氷が発生するわけではなく、10日に1回乃至は数日に1回ぐらいしか見ることはできないのです。だから、観光客はその日にうまく当たらないと観察することはできません。チャンスが大事なんです。その昔、当てずっぽうに行って、一度失敗した経験があるのです。 雲仙の近隣(車で2時間以内の距離)に住んでいるのであれば、当日の朝、霧氷の付き具合を確認して出かければ観察が可能です。それ以外の地域の方は、雲仙に前泊しないと時間的に間に合いません。午前10時を過ぎると、霧氷は解け始めて落下してしまうのです。だから、その前までに現地に到着する必要があります。前泊しても、翌朝うまく発生するとはかぎらないので、そこが難しいところです。 私の場合、この霧氷観察に当たっては、次のような段取りで実行しました。 @毎日の天気予報と天気図を注意深く観察し、低気圧が通過して天気図が西高東 低になるのを待ちました。 A前夜の天気図で、その条件が成立しつつあるのを確認し、当日朝の自宅周辺の 天候を目で確認しました。すると、雲が垂れ込めて山沿いでは多少霧が出てい る様子でした。これは好条件に違いないと判断しました。 Bそこで早速、8時過ぎに妙見岳山麓の現地ロープウェー事務所に電話して霧氷 発生の有無を尋ねました。すると、「山頂付近に霧氷がついています。」との回 答を得ました。 これを受けて8時半過ぎ、車で出発しました。自宅から雲仙まで1時間半の行程です。麓から見ると、雲仙方面はガスに包まれて見えません。でも、運転の支障になるほどの霧ではありません。登山道路をどんどん上ると、雲仙ゴルフ場に出ます。その横を通り抜けて行くと「仁田峠循環道路」(有料で770円)の入口にさしかかります。横の表示板には「霧氷」「霧」という表示が出ています。 料金を払って循環道路に入ります。よく整備されていますが、道路幅が狭いために一方通行になっています。ピンカーブの多い上り坂をどんどん上って行きます。その途中に展望台があり、そこから91年に大噴火した火砕流の迫力あるシーンが眺められるのですが、今日はすっかり霧に覆われて何も見えません。ここはそのまま通過して、さらに上って行きます。入口から10分足らずで仁田峠の駐車場に到着します。時計を見ると、10時を回っています。 ここで下車すると、前方には妙見岳(1333m)がそびえ、その斜面にはロープウェーが山頂付近まで伸びています。ロープウェーの下の登山コースを登ることができますが、今日は霧がかかって視界が悪いので、ロープウェーで登ることにします。往復運賃1220円を払って一気に上ります。残念ながら、今日の視界はほとんどゼロで、雲上人になったような気分です。 数分で到着すると、ここから100m足らずの階段の山道を登りながら山頂の展望台に向かいます。周りの木々には純白の霧氷がきらめきながら静かにまとわりついています。上に登るに従って、霧氷の長さもだんだん長くなっています。やはり、高いところほど、つきやすいのでしょう。 |
妙見岳の斜面に霧氷の花を咲かせた樹林 霧氷に覆われた頂上付近 |
地面は、すでに落下した霧氷の切片が積み重なって真っ白になっています。まるで雪が降り積もったかのようです。しかし、よく見ると、氷片を敷き詰めたようになっています。こうして、周囲の木々や地面も見事なまでの純白の世界を演出しています。ここに立つと霧氷の精に包まれたような錯覚を覚えます。切片を踏みしめながら歩くと、サクサクと心地よい音がして、耳を楽しませてくれます。 白一色の世界。この中にいると身が清められる思いがします。 雪女が出てきそうな雰囲気です 一面の白色の世界は見事というほかはありません 見上げる樹木には霧氷の花が満開 今日は、この展望台までの区間に見事な霧氷ができています。初めて見る霧氷の光景に息をのむばかりです。この霧氷は、山にかかった雲や霧の過冷却の霧粒が風によって木の枝にぶつかり、凍り付くものなのです。だから、今日の霧は絶好の条件となったわけです。霧氷は風上に向かって木の枝に付着し、鋭い刃のように伸びて行きます。いちばん長いもので6〜7cmはあるでしょうか? なんとも見事な出来栄えです。 圧巻! ここまでよく伸びました。刷毛のように付着した長さ6〜7cmの霧氷。 この霧氷は風上に向かって伸びていきます。この様子からみると、右側から風が 吹いたと思われます。 これが陽光に照らされて輝く光景は素晴らしいの一語でしょう。でも、今日は残念ながら霧に包まれて陽射しはありません。陽光に照らされれば、それだけ早く解けてしまうので痛し痒しです。この霧氷は、2月を中心に12月中旬から3月上旬までの期間に見られる冬の雲仙を代表する風物詩で、地元では、親しみを込めてこの霧氷のことを「花ぼうろ」と呼ぶそうです。 頂上の展望台に登って、その美しい霧氷に見とれながら、じっくりと観賞します。今日は無風状態で寒くもなく、穏やかな天候です。そのせいか、眺めている間にバサリ、バサリとあちこちの枝から霧氷が落下して行きます。その様子を眺めていると、いかにも力尽きてもう耐え切れないといった感じです。早く観賞して愛でてやらないと、どんどん落下して行くばかりです。この霧氷は、ほんとにはかない命なのです。厳しい気象条件をクリアしてやっと霧氷をつくり出したというのに、あっという間に霧散してしまうのです。そのはかなさがなんともいとおしく、いっそう美しさを増します。 次はいつ逢えるのでしょうか? 地球の温暖化が気になりますが、いつまでも変わらずに、この美しい自然現象を見せてほしいものです。そんなことを思いながら白く埋まった山道を下り始めました。 (完) |
ロープウェー頂上駅展望台から眺めた美しい霧氷の風景。 |