秋空広がる10月14・15日の両日、長崎は伊良林・若宮稲荷神社で恒例の秋の大祭が催され、有名な「竹ン芸」が奉納されました。狭い境内を埋め尽くした観衆は雌雄2匹の白ギツネ役が10mの竹の上で繰り広げる空中妙技に息を呑みました。
この「竹ん芸」は国と長崎市の無形民俗文化財に指定されており、約200年の歴史を誇る伝統芸なのです。この芸は神社の使いの白ギツネが祭りばやしに誘われ、竹やぶで戯れる様子を再現したものといわれ、その起源は中国伝来の羅漢踊りにあるとされています。文政3年(1820年)に初めて八百屋町が諏訪神社に奉納したのに始まるといわれます。今年はこの道13年のキャリアを持つという保存会の光嶋さん兄弟が雌雄の白ギツネに扮して芸を披露しました。
竹ン芸の様子
笛や太鼓、三味線のはやしが境内に流れる中、白装束に身を固め、キツネの面をかぶった2匹の白ギツネが、しつらえられた竹やぶをよちよちと通り抜け、高さ10mの竹に取り付きます。

写真のように竹やぶが設けられ、
その中に2本の竹が渡されてい
ます。
2匹の狐は手前の控え室から出
てこの2本の竹を渡り歩き、先の
上り竹に取り付きます。
右手に本殿があり、遠くに見え
るのは長崎市街。
以下の竹ン芸の写真は、これと
反対の向こう側より撮影。位置
が悪く芸の様子が見にくい結果
になりました。位置を変えるにも
混雑で身動きできずでした。
そして、はやしや周りの“よいしょ”という掛け声につられるように一段一段ケタ梯子を上って行きます。途中でケタに足を引っ掛けて身体を乗り出して見せたりしながら徐々に頂上を目指して上って行きます。

上り竹に取り付く
と遊びながらゆっ
くりと上って行く
すぐ下に2匹目の
狐が見えます

立ち上がって上へ
上ります

おっと、上りの途
中 で早くも逆さ吊
りの演技です

雄ギツネ、雌ギツ
ネがそろって上り
始めます。しっぽ
もちゃんと付いて
います。

2匹そろっての演
技
撮影位置が悪く
形がよくわかりま
せん

逆さになった雄
ギツネに雌ギツ
ネがぶら下がり
ます

雄ギツネは大の
字になってぶら
下がり、下の雌
ギツネは逆さに
なって空中を泳
いでいます
頂上に達すると、そこでさまざまな芸を披露します。その演技は道行き・宝珠印・逆上がり・吊り下がり・両扇・大の字・男狐逆上がり・女狐渡り・カンタン夢の枕・餅まき・ゆり・逆さ降りなどの名称が付けられています。 逆上がりや逆立ち、2匹がからまって行う合わせ技などを次々と演じます。途中では1匹のキツネが空中に飛び出す仕草をして驚かすなど、観衆はこの命綱なしの揺れる竹の上での演技に思わず固唾を呑んで見入ります。また、竹を前後に大きく揺らして他のもう1本の竹にぶつかるほど、しならせます。見上げる観衆は大丈夫かと息を呑みながら見守ります。

いよいよ頂上で
の演技開始です。
雄ギツネは仰向
けになって2本
の竹の間に架け
橋を作ります。
度胸のいる演技
です。

スゴイ技〜!
架け橋になった
狐の胴体を足で
挟み逆さにぶら
下がっています

手前の雄ギツネ
はてっぺんに座
って狐の仕草を
しています(親指
と中指をくっつけ
て狐の形をつくっ
ています。指先
に注目)。
同時に雌ギツネ
は直径10cmほ
どの竹のてっぺ
んに腹を乗せ両
手両足を広げて
バランスをとって
います(指先に注
目)。ドキドキの
技です。
ひととおりの芸を披露し終わると、今度はまきものが始まります。しっかりと閉じられた懐を開くと、そこに隠し持っていたものを一つかみずつ観客に向かって撒き散らします。これは縁起物の紅白餅や菓子、タオルなどです。観衆はわいわい言いながら縁起物のまきものを奪い合います。

雄ギツネが懐か
ら取り出して撒き
物をしています。
下の観衆は大騒
ぎです。
そして最後のクライマックスは、雄ギツネがおもむろに懐から一羽のニワトリ(白色)を取り出し、観衆に向かって放ちます。どこへ飛んで行くか分かりません。舞い降りたニワトリを捕えた者は縁起がいいということで、大騒動です。運良く捕獲した者は、そのニワトリを持ち帰っていいことになっています。
それが終わると、いよいよ大詰めです。雌ギツネは先に下りて雄ギツネだけが残ります。そこで竹のてっぺんで逆立ちの芸を見せます。次いでてっぺんに腰掛けながら竹を大きく揺らします。竹が大きくしなり、観衆ははらはらしながら見上げます。そして今度は足をケタにかけ、逆とんぼになってダイビングして見せます。みんなわっと思わず叫びます。間違って落下した!?と思うからです。
それが終わると雄ギツネは10mの竹の上から下りるのですが、これが逆さになりながら、あっという間にすべり下りるのです(逆さ降り)。みんなひやりとさせられます。一瞬、失敗して落ちたのではないかと錯覚させられるほど、見事な下降技です。竹の下では3人の男衆が肩を組んでこれをしかと受け止めます。これを最後に約30分間の竹ン芸の妙技は幕となります。

揺れる竹のてっぺんで逆立ち。見る者、思わず手に汗をにぎります。

竹を前後に大きく
揺らしています。
思わず息を呑み
ます。

逆さまにダイビン
グするような仕草
をしています(こ
こでも狐の形を
作っている指先
に注目)。

「逆さ降り」の妙技
てっぺんから一瞬
にして逆さに滑り
降りる
垂直の竹
この竹ン芸には垂直に伸びた長さ10m超の2本の孟宗竹が使われます。曲がった竹は不可で真っすぐ伸びた竹でなければならず、しかも丈夫でよくしなるものでなければなりません。そのため、この竹探しが大変だそうで、1年がかりで見つけ出すのだそうです。近年は開発が進み竹林が減少傾向にあるので、竹探しは年々困難をきわめるそうです。
演技用の竹は雄竹(演技竹)とケタ梯子の横棒がついた雌竹(上り竹)の2本。この2本の竹の他に子ギツネ用の低目の竹がもう1本用意されています。これは子ギツネたちが演じるのに利用するものです。

左が雄竹の
「演技竹」
右が雌竹の
「上り竹」
今年はなんと3歳児のほか、小学校中学年と高学年の3匹の子ギツネたちが上ってかわいい演技を披露しました。こうして竹ン芸は彼らに引き継がれ、将来の雄ギツネ、雌ギツネに育つのでしょう。

可愛い3歳児の子ギツネ

小学中学年の子ギツネ
可愛いしっぽが見えます

撒き物をまいています

小学高学年の子ギツネ
撒き物をまいています
例祭の時期
この竹ン芸は若宮稲荷神社の例祭の奉納行事として毎年10月14、15の両日行われます。今年の竹ン芸の披露時間は次のとおりです。
14日:午後2時、8時の2回
15日:午後12時、3時、8時の3回
夜の部では、夜空に舞う白ギツネの演技が幻想的で、また昼とは違ったおもむきが見られます。
若宮稲荷神社の参道
思案橋から寺町通りを北に向かって真っすぐ歩き、興福寺前を通り過ぎてさらに進むと、その突き当りがカギ型に道が曲がります。それを右に折れて少し進むと右手に大きな石造りの一の鳥居が見えてきます。これが神社の参道入口になります。ここから小川沿いに石畳の坂道と石段が境内まで続くのですが、その間に鮮やかな朱塗りの赤鳥居が約30本ほど立っていて鳥居のトンネルが続きます。この参道の途中、細道を右手へ曲がると坂本竜馬ゆかりの「亀山社中」跡に出ます。竜馬もこのお稲荷さんによく参ったそうです。

一の鳥居をくぐると、その先に大きな朱塗りの鳥居がある。

赤鳥居のトンネルが珍しい。ここをくぐって上へ上って行く。

さらに石段を上り、赤鳥居の列をくぐり抜けて境内へ向かいます。

上の写真現場を上から眺めたところ。かなり高台へ上ったので市街が下に見え始めます。
この鳥居のトンネルを通り過ぎてさらに上ると前方の高い石垣上に神社の境内が見えてきます。ここから急階段を上りあがると神社の狭い境内に至ります。ここまでの階段数は約200段もあり、息がはずんでお年寄りにはかなりハードな道のりとなります。この神社はこれほどの坂道階段をともなう高台にあるため、境内からは市街の風景を一望することができます。

さらに上りあがると、やっと境内が見え始めます。

最後の大鳥居をくぐって右へ折れるとまた赤鳥居の列が・・・。

奥の石段を上ってようやく狭い境内に至ります。これが若宮稲荷神社の本殿。

本殿前の狭い境内に「竹ン芸」の竹が立てられています。右の低いのが子ギツネ用の竹です。
稲荷(いなり)神社とは
稲荷神社とは稲荷神を祭った神社のことを言います。この稲荷神は五穀をつかさどる食物の神、宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)のことで、穀物の神の総称となっています。この神社は稲荷大明神(いなりだいみょうじん)ともいい、お稲荷様・お稲荷さんの名称でも親しまれています。
この稲荷神は本来、穀物・農業の神とされるもので、稲が生育し、収穫された稲を荷のように架けて乾燥させるまでに成長したことへの感謝の意を表していると考えられています。稲荷を「いねに」や「いなに」と呼び、それが訛って「いなり」に変化したと考えられています。
稲荷神と狐
宇迦之御魂神は別名「御饌津神」(みけつのかみ)とも言われるそうですが、狐の古名を「けつ」と言うのだそうです。そこで御饌津神を「三狐神」と理解して、狐が稲荷神の使いであるとされたそうです。狐を稲荷神の使いとする民間信仰は、中世より始まったものだそうです。稲荷神社に祀られている狐の多くは白狐(びゃっこ)だそうです。
三大稲荷
日本にある稲荷神社は2万社とも3万社とも言われており、その総本社は京都伏見区にある伏見稲荷大社となっています。日本三大稲荷は総本社の伏見稲荷大社(京都)、祐徳稲荷神社(佐賀県鹿島市)、豊川稲荷(愛知県豊川市)といわれています。
(2007年10月28日記)
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